私と性と鞄②
妻のために作った鞄
【言わない】は【言えない】でもあります。
家族にも友人にも相談できず、大喧嘩をしても駆け込む先もありませんでした。
どんなに喧嘩をしても、二人で冷静に話し合って解決していくしかありません。
「もう、知らん!!」
と、家を出て行っても数時間後には帰って話し合う。二人で気持ちを言い合う。そうする事で解決してきました。
それはとても苦しいものでしたが、そうやって解決していくうちに自然と「彼女を支えるのは自分なんだ。」と、思うようになりました。
そうやってぶつかりながら、身を寄せ合って生きていた時、彼女が「仕事を増やしたい」と、相談してきました。
彼女は、私に勿体ないほど良くできた人です。
すぐ気が付くし、優しいし、誠実で、柔軟で・・・あげていくときりが無いほど、できた人ですが、当時の彼女はできた人すぎて壊れやすい人でした。
他人の悪口を耳にすると心を痛めて、職場内いじめを見ると悲しくなってどうにかしたいと悩む。殺伐とした環境が苦手で、どうにかして淀みを解消したいと考える。
そのためなら、自分を犠牲にしてしまう人で体にも心にも無理をさせる。
そんな感じなので、彼女は仕事があまり好きではありませんでした。
その人が、「仕事を増やす。」と言う。
私はとても心配になりました。
しかし、彼女の人生は彼女のモノです。彼女の選択を尊重し、私は応援する事にしました。
応援・・・と言ったって、やっぱり心配。私が彼女を支えなければ・・・。だけど、仕事を増やしてしまうと、職場でも会えなくなるし・・・
彼女のチャレンジを応援する気持ちを、どうにか形にできないか。
「あ!かばん作ろう!」
悩んだ結果、私は彼女の仕事用鞄を作る事にしました。
職場は鞄の制限がありませんでしたから、彼女の服装に合わせて彼女が履いていたGパン生地を使って、カジュアルな服装にも合う鞄を作ろう!!となったわけです。
その時に作ったカバンがこちらです。
水筒と弁当とポーチが入って、狭いロッカーに折り曲げて納めれる小さめの鞄でした。
今、『Yue-ni-鞄』の店頭に並んでいる鞄の元祖です。
因みに、後ろはこんな感じでした。
ちょっと写真がへたすぎますね(笑)
サスペンダーも、パンツもこの時思いついたデザインです。
何で、このデザインにしたのか。
正直に言うと、ひらめいた時にあまり理由はなく・・・
「鞄がズボン履いてたら、おもしろいやん!」
でした。
そして、デザインの工程で
「・・・パンツも履かせたら、もっと笑いが取れる!」
その程度で、ただ、楽しくて彼女のイメージにあう鞄を作ったらこうなった。と、言う感じです。
でも、私が【面白い】にこだわった理由はあります。
少し変わってて【面白い】方が話題性があると思ったんです。
日々、顔を合わせる職場の人たち。
仲良くないし、会話に困る事、ありませんか?
私は特に【秘密】があって、立ち入られたくなかったので深い話はしませんでした。勿論、相手の深い話も聞こうとはしません。
つまり、話題が無くなってしまうんです。
天気の話だけではネタが尽きてしまう。
彼女も、私同様【秘密】を抱えた秘密主義者でしたから、話題に困っていました。
詮索されたくないけど、話したく無い訳ではない。
そういう時に、少しだけ【面白い】自分をアピールできるものがあると相手も話しかけやすいし、自然と話題がつながる。【面白い】は便利です。
実際、彼女も沢山の人に声を掛けられ、鞄の事を聞かれたそうです。
「その鞄、面白いね。」
「どうなってるの?」
「自分が履いてたGパン使ってるの?」
「ぱ、パンツ履いてる!」
などなど。
服装や、アクセサリーの事は聞きにくいけど、鞄なら気軽に聞きやすかったのかもしれません。
『Yue-ni鞄』の鞄
『Yue-ni-鞄』の作る鞄は、デザインという【話題性】を重視した鞄です。
沢山便利なポケットがあるわけでもありません。
傘入れやペットボトル入れが付いているわけでもない。
本来の【袋物】としての鞄ではありません。
自分を差し占めす【目印】としての鞄です。
自分がどんな人なのか。自分がどういうものが好きなのか。
表明するためのデザイン。知ってもらうための鞄。
そのためにオーダーメイドも受け付けております。
ご自身の履いていたGパン、履かなくなった、捨てれないGパンを使って。
もっと個性の欲しい方は、シャツやパンツもオーダーして頂けます。
男らしさが欲しい方は、ふんどしも。
『袋物』の枠を超えて、デザインという機能性を備えた『Yue-ni-鞄』のデザインバッグ。あなたの表現をお手伝いする、強い味方です。
多くの【秘密】を抱えた人たちに
このデザインを考えた時には、自分の性について深く考えていませんでした。
ずっと秘めたものにしようと思っていたからです。
でも、誰にも【言わない】を貫く事は、難しいです。
気が付かないうちに孤立してしまいます。
同性愛の方々へ。
【言わない】でいいから、あなたの性を【秘密】を形にしてみませんか。
人とは違うところを、隠さずに少しだけ表現してみませんか?
あなたの隠れた【性】を鞄の履いている下着で表してみませんか?
『Yue-ni-鞄』は、妻と二人で運営しています。
レズビアンの鞄屋です。
同性愛の苦しさを理解できる、数少ない鞄屋です。
『人とは違う』という気持ちを、少しでも和らげたい。
あなたは、あなたで良いという事を、鞄を通して感じてほしい。
レズビアンのかばん作家がいる『Yue-ni-鞄』
コロナウイルスが過ぎ去った頃に、一度ご来店ください。
お話ししましょう。
『Yue-ni-鞄』店主 YUE