私と性と鞄①

私はレズビアン

突然ですが、私はレズビアンです。

私は女性で、13年連れ添った妻と今も一緒に暮らしています。

 

レズビアンと言うと、理解できない方もおられると思いますが、『Yue-ni-鞄』の鞄は対人恐怖症で、自己肯定感が極端に薄い『妻』のために作ったのが始まりです。

 

レズビアンである苦しさと、妻への思いが生み出したデザインです。

 

『Yue-ni-鞄』をお話しするには必要でしたので、今回カミングアウトする事としました。つたない文章ですが、どうぞお付き合いください。 

 

 

私がレズとして生き始めたのは大学1回生の頃でした。

元々、女の子に興味があったわけではありません。

でも、今思えば男の人にも興味はありませんでした。

父親に「女なら、これくらいしろ」と言われて、家事や料理の手伝いを強制される思春期をおくった私は、『男』とか『女』という性別に疑問を持っていました。

 

女でも、男でもない。自分と言う存在を見てくれる人をずっと探していたように思います。

 

そんな折、出会ったのが演劇部の先輩だったパートナーです。彼女は、性別を超えて人を見る人でした。性別で、人を決めつけ、女らしさを求める人ではありませんでした。

 

大学生の一人暮らしだったので、自然と彼女と一緒に住む事になり、今に至ります。

女性が性的対象と言うよりは『運命の人がたまたま女性だった』という感じです。

 

 

誰にも言えない幸せ

 彼女と一緒に暮らして、喧嘩も沢山しました。

二人とも頭にきて、コーヒー牛乳の1リットルパック(未開封)を投げあった事もあります。

まあ、結果は大惨事でしたが(笑)

床に飛び散った薄茶色い液体を、二人で拭きながら「ごめん。」と謝りあったのは、今でも笑える話です。

 

沢山衝突もしたけど、私は彼女と一緒にいて人生で一番幸せな時を過ごしています。

私を一番理解して、応援して、支えて、愛してくれる。優しい人です。

 

でも、この幸せは誰にも言えませんでした。

言えば、いろんな事が壊れてしまうからです。

 

母に「彼女と付き合っている」と伝えた時、母は酷く動揺しました。

母と彼女はすでに面識があり、母は彼女の事をずっと『娘の大学の先輩』と思って接していて、『お付き合いする関係』という認識がなく、混乱したようでした。

 

「理解できない。」

母は、そう言い「別れなさい。」とも「絶対にダメ。」とも言いませんでしたが、母の彼女に対する態度は明らかに変わりました。

 

今までは笑って話していたのに、少し冗談を言っただけで怒り出す。

会話していても、どこか彼女を目の敵にして、トゲがある言い方をする。

私が彼女の話をすると「〇〇の事ばっかり!」と怒り出す。

「男の子は無理なの?」と聞いてくる。

些細な事かもしれませんが、恋人とわかった瞬間の態度の変わり様は子供としても人を愛する人間としても悲しかったです。

 

「何で、女の子と付き合ってるの?」

と、せめて聞いてくれれば話もできますが、母は聞きませんでした。聞かずに、彼女に対する嫌悪感だけを示してきたのです。

 

「受け入れてもらえないんだ。」

という衝撃と、人間関係が崩れて傷つく彼女を見て私は「もう周囲には言うまい。」と思いました。

 

 

違いを隠す人生

【言わない】は、彼女と私の幸せな生活を護るものでした。

 

 それからは、職場や友人にも言わず『一緒に暮らす仲の良い二人』で通してきました。

 

「結婚は?」

「彼氏は居るの?」

「子供は生みたくないの?」

 

そういった言葉を投げかけられる度に、

 

「結婚?相手がいないんですよ~。」

「彼氏?いませんよ~。」

「子供?産んでも育てる自信がありません。」

 

と、答えてきました。

本当は

 

「結婚もしてる(事実婚)し、彼氏じゃなくて彼女というか妻がいるし、子供は欲しくたって生物学的に無理!」

 

と言いたい。

 

 

 

でも、言ってしまったら、そこからどうなるか。

 

 

 

彼女とバイト先が一緒だったこともあり、恐ろしくて、誰にも言えませんでした。

 

 

 

【言わない】は、どんどん私の中で膨れ上がっていきました。

【彼女の事だけを言わない】が【自分の事も出来るだけ言わない】になっていったのです。

人は一つ秘密を抱えると、秘密に呑み込まれていくのかもしれません。

私は、周りに自分の事を出来るだけ話さないようになっていました。

職場でもどこでも、詮索されて秘密がばれるのが怖く、できるだけ関わらないように過ごしました。

 

今思えば、中には分かってくれる人も居たかもしれませんが、もう人を信用できなくなっていたんだと思います。

 

「どうせ、誰にもわからない。」

 

最初っからそう決めつけていました。

 

 

 

 

 

 

私と性と鞄②に続く